コンサルタント・ブログ

HOME » 代表ブログ » 竹内 美奈子の代表ブログ » 「ロシアに行ってきました。」
      ~ ロシア経済と日本、そして、アナスタシアのこと ~

[代表ブログ]竹内 美奈子の代表ブログ

« 前のページに戻る

「ロシアに行ってきました。」
      ~ ロシア経済と日本、そして、アナスタシアのこと ~

  旅から戻ってくると、季節が変わっていた、ということがよくある。
8月の終わりから、日本の酷暑を避け、ロシアへ旅立った。「戻ってきたら、夏が終わっていた」ということを、期待したのだが、近頃は、そういう季節の感覚が、ついずれてしまいがちになる。地球全体の、季節感が、以前とは変わっているように感じる。

  さて、昨年のミャンマーに引き続き、今年はロシア(モスクワ、サンクトペテルブルグ)への視察団に参加した。
  ミャンマー同様、ロシアの情報はごく限られた(偏った)情報しか、日本に入っていないように思うので、少し概観を紹介しつつ、私自身が感じとったことを(独断と偏見になるが)、ご報告したい。

  今回の訪問地は、モスクワとサンクトペテルブルグである。たまたま、モスクワにも、サンクトペテルブルグにも、今回も同行頂いた友人の岡俊子さん(アビームM&A社長)の友人がいらしたり、私の友人がサンクトペテルブルグの大学で客員教授をしていることもあって、少しは情報を頂いていたのだが、やはり、見ると聴くとは大違いである。 いかに、私たちが報道を通じて知りうるロシア(外国)と、実像とが異なるかを、思い知ることになる。


  まず、モスクワに降り立った印象は、「物が豊かな都市」である。街には、高級車が走り、高級ブランドの店が立ち並ぶ。
  聴けば、モスクワ人の収入は、経済成長率4%のロシア国内でも平均年収の3倍近くあり、可処分所得が7割(欧州は4割)だそうである。ローンが少なく、社会保障負担等も少なく、銀行をあまり信用していない(ルーブルを信用していない)ので、貯蓄も少なく、そのためか、一般の企業は、給与を月2回に分けて支払うらしい。

  マーケットとして見たモスクワの購買力は大変高く、高いものほど売れるという時代が長く続いたらしい。その中に、多くの日本製品(自動車、食品など)も含まれている。ちなみに、JETROモスクワ事務所で頂いた資料によると、ヨーロッパ産の果物よりも日本産の「サンフジ」や「巨峰」や「あまおう」が、1.5倍~7倍くらいの値段でも、よく売れるとのことである。(ちなみにオランダ産リンゴが357ルーブル、「サンフジ」が2596ルーブルだから、約7倍、キロ8000円である。)

  また、モスクワは、ガソリンが安いこともあり、(09年の消費底打ちから一転、10年11年共、前年比150%に回復し)、利益率の高い大型車やラグジュアリ車を中心に、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ車や日本の高級車が大人気だそうである。「世界一メルセデスの走る街」とも言われる所以である。2日目に「Ernst & Young」モスクワ事務所で受けた「ロシアにおける自動車市場」というレクチャによると、ロシアの車の60%が外車である。街中で観察すると、確かに日本車は各社まんべんなく走っているし、注意深く見ても、小型車はほとんど見られない。
(ちなみに、11年上半期の外車TOP10は、Chevrolet、Renault、Hyundai、Kia(韓国車)、Nissan、Toyota、Ford、VW、Daewoo、Mitsubishiである。)

  日本の進出企業は、モスクワで(ジャパンクラブ加盟企業が)約200社、サンクトペテルブルグで49社。もちろん、ヨーロッパ企業の進出、特にドイツがダントツとのことであるが、なんと言っても、私が実際に見た印象は、(世界の御多分にもれず)、韓国企業(特にS社)の露出度である。

  一方、生産拠点としてみたときのロシアは、たとえば、サンクトペテルブルグのように経済特区になっている地域を中心に、日本企業の進出も活性化しているが、このような港湾地域以外の内陸のロジスティクス、自動車部品など地域のサプライヤーとの共存、人材の確保(サンクトぺテルブルグはもはや失業率0~1%である)、法・税制、地場通貨の調達、膨大な書類文化などの話を聴くと、まだまだ見えないハードルが立ちはだかっているように見える。
  日系現地法人の方が、進出には準備期間が3年かかったとおっしゃっていたが、単にBRICsブームに乗るだけでは、安易にできない決断であり、現地の方々の苦労話には、頭が下がる思いであった。
  特に、国策上ローカル企業との共存が要求され、たとえば外資自動車メーカへは、税制優遇の見返りとして現地調達率を段階的に上げるコミットメントを要求されるということである。


  色々な方のお話を聴く限り、メドベージェフ大統領の「近代化政策」(医療、エネルギー、原子力、IT、宇宙・通信)の、どの領域にも、隙間はたくさんあり、成長の伸びしろが大きいように思え、外資の参入機会も潜在ポテンシャルは高い。
  国全体として、原油依存の経済が安定している限り、現在の成長を続けるだろうが、来年の大統領選挙及び、その後の新たな産業政策と、付加価値ビジネスやソフト面の質の向上が次の成長のカギになるのであろう。(例えば、一見、道路や地下鉄などの交通網も発達しているように見えるが、信号の連携や安全対策は未整備で、交通渋滞などが、明らかに社会問題化している。)

  その中での、日本の位置づけは、ひとえに、そのような付加価値の高い領域で、ローカル企業とうまく付き合い、製販ともに、ロシアの人々のハートをキャッチできるか、また、特に、付加価値向上の部分に寄与できるかにあるように思えた。(たとえば、デジカメは既に韓国勢に抜かれているが、一眼レフは日本の独占市場だそうであり、ユニクロも、むしろ高級衣料を軸に、現在の3店舗から10店舗への成長シナリオを描いている。)
  そこに、さまざまなバリアを超えるためのサポートを得て、未だ価値を認められている「日本ブランド」をどう活かしたビジネスを展開していくかであるように思った。(前出の「Ernst & Young」モスクワ事務所には、日本人のディレクターもいらして、そのサポートをきめ細かく行っていた。)


  さて、私の関心事のひとつは、原子力、エネルギー政策にあったのだが、チェルノブイリ以降も、政府の政策には大きな変化はないという。また、自動車産業の中で、EVや、エコカーや、環境エネルギーの議論もほとんどないと、前出の「Ernst & Young」のAutomotive担当Directorの方がおっしゃっていた。それも、石油依存の経済の恩恵だろうか。
  私は、逢う人ごとに、「ロシア人からみた日本の原発事故はどう見えているのか」を訊いてみたが、一般市民は、「チェルノブイリ」における情報開示への不信、負の教訓から、日本人も「ガイガーカウンター」は各自が持つべきである、なぜそうしないのかと、誰もが思っていると、聞いた。
  ちなみに、サンクトペテルブルグの「BAR」でも、「フクシマは大丈夫か。」と、お見舞いの言葉をかけられたのも、印象的だった。

  
  一方、私が予期せずあちこちでお聞きしたのが、ロシアの人々の「親日感情」である。ともすると、ロシアに関する日本国内の報道の何割かが「北方領土」問題で占めているせいか、日本人のイメージの中には、政治面での「対立軸」が刷り込まれているように思うのは、私だけだろうか。
  ところが、ロシアでビジネスをされる日本人の方(銀行、自動車、電機、商社、そしてJETROの方)誰に聞いても、口をそろえて、「ロシアの方は、とても親日的ですよ。」と、おっしゃるのだ。それは、日本製品、日本ブランドへの憧れ?であり、「日本製品のブランドイメージはヨーロッパ製品よりもよい。」という方もいたし、「『村上春樹』は、みんな読んでいる。」という方もいた。
  また、モスクワやサンクトペテルブルグのような、ヨーロッパロシアからみると、(誤解を恐れずに言えば)極東の片隅で起きているいざこざとしかみえない「領土問題」は、彼らにとっては相対的な位置づけとしてはとても小さく、ほとんど報道もされないというから、この情報格差は、歴然としている。(そのこと自体が問題であり、私自身が小さな問題と思っているわけではない。)


  最後に、ロシア滞在最終日に、終日サンクトペテルブルグを案内してくれた、アナスタシアの話をしたい。
  彼女は、日本在住15年、現在は京都大学の大学院生であり、「ドキュメンタリー」の研究をしている。(彼女のお祖父様はロシアで有名な映画監督である。) ちょうど逆留学で、モスクワ大学で半年間研究を行うらしく、帰国中、友人である岡さんと私の案内役を買って出てくれた。
  26歳の彼女と彼女の父上(同志社大学でロシア語を教える)が、終日案内をしてくれたサンクトペテルブルグ(特に文化面)については、後日改めて記したいと思うが、彼女は、正しく深い歴史認識と、彼女なりの文化への価値観、政治・経済への深い洞察に基づいた知見の溢れる、素晴らしいガイドをしてくれた。私たちの質問攻めにも、いつも明快かつ的確な回答をしてくれて、私たちの旅に、とても豊かな収穫をプラスしてくれた。彼女に感謝するとともに、自分の26歳のころは、これほど日本の文化や歴史、政治について、外国の方に語れただろうかと思うと、はなはだ自信がない。今の日本の26歳はどうだろうか。。。

  ちなみに、ロシア語、英語、日本語を流暢に使いこなすアナスタシアに、論文は何語で書くのかと訊いたら、日本のアカデミアでは日本語で書かないと読んでもらえないので、日本語で書くと。(淋)。 ロシアではロシア語ではなく英語らしい。
さらに、「ロシア語、日本語、英語で書くときに、頭の中では難しいことを何語で考えるの?」と訊くと、うーんと、一瞬考えて、「たぶん、私の中での独自の共通言語があって、それで思考して、書くときには、それぞれの言葉を使うのだと思う」と彼女は答えた。 真のマルチナショナル・マルチカルチャ人間は、そういうことなのだと、初めて知った。

  彼女はアカデミアの世界でキャリアを築いていくのだろうが、ここにも、りっぱなグローバル人材の卵を発掘して、なんだかとてもうれしく、明るい気持ちで、旅を終えることができた。

  ちなみに、彼女は典型的なロシア美人だが、日本語は、きわめて流暢な「関西弁」である。
  半年後、春を迎える日本(できれば京都がいい)で再会するのが、楽しみである。

カテゴリー

代表ブログ一覧

下野 稔

竹内 美奈子

Powered by Movable Type 3.33-ja